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統合学術国際研究所規則

前文  ―「統合学」宣言

 「散逸構造理論」の提唱者、イリア・プリゴジンは、報告書『国際フォーラム2000』の巻頭言『新しい幕開けか?』の中で、みずから努力してきた「統合」の三つの局面について語っている。ひとつは、今日の諸科学の中での局面において、もうひとつは、自然科学と人文科学との両者間での局面において、更にもうひとつ、西洋と東洋との交流の局面において、それぞれになされるべき課題への重大なる関心についてである。彼のこの「関心」は、われわれがここに断乎たる決意をもって継承せねばならぬ関心である。「統合」は、かくて、学術と国際の両方から要請せられている。わが研究所のこの名の由来は、そのまま時代の「新しい幕開け」を、プリゴジンと共に世に告げ知らせるものとなろう。

 ここで「統合学術」と謳うのは、今日、学術の諸分野にて、すでに科学観の新たな潮流の影響が認められるからである。それをあえて一言でいいあらわせば、散逸構造理論から導かれた「自己組織能」に関わる思想といえるだろう。この思想をめぐって展開する潮流は、二十世紀に猖獗をきわめたニヒリズムの本流によって引き起こされたのであった。ニヒリズムといち早く対峙した哲学者ハイデガーの「顕現せざるものの現象学」からすれば、この見解は、まさに「顕現せざるもの」への関心に関わっていた。従来の科学は、すべて顕現する現象、即ち、〈現前性〉にのみ、存在者の存在の姿を見てきたのであるが、「存在の真理」は、実は、そこに存在してはいなかった。

 そのことへの気付きが、現代諸学の潮流の方向を、「顕現するもの」から「顕現せざるもの」へと向きを変えさせたのである。ポストモダーンといわれる潮流にて、「秩序説」から、所謂「複雑系」(complex system)を意味する「混沌(カオス)説」へと、果敢にパラダイムシフトしてゆくのは、そのことを如実に物語る。いまや、こうした潮流に逆らうことはできないのではないか。あらゆる学術領域にて、いまや「存在の真理」が新たに探求されつつ、いやおうなしに思考のパラダイム転換を迫られるのは、そのためであろう。

 われわれがここに掲げる研究主題「統合」とは、したがって世界の変動に対応する「自己組織性論」に関わる。自然科学と人文科学のいずれの分野にも共通する主題として、いま問われているのは、まさに「存在の真理」である。存在は、今日、カオスという無に直面している。いままでの存在了解とは、ものごとに現前する「統一」「秩序」の仕組みを解明することにあったが、その現前性のみの方法論では、それが十分に実現できなかった。なぜか。顕現化する現象の現前性では、真理は隠れることを好むからである。根源的な「存在の真理」とは、意外にも「顕現せざるもの」の中にこそ潜む。しかも、〈やがて〉暴き出されるといった存在の仕方で潜むのではなかった。自己組織能が「カオスの縁」にあるといわれているように、存在の統合の仕組みも、「顕現せざるもの」の〈縁〉にこそ、その成立ちをもつのである。

 「統合国際」とここで謳うのは、プリゴジンのいう「西洋と東洋の視点」であり、先の『国際フォーラム2000』にて試みられたテーマのひとつ「モナドロジーと一念三千論」に象徴せられる現代における仏教並びに諸宗教間と哲学乃至科学を通底する信と知の統合の可能性を追い求めることである。西洋と東洋との共可能性をどこまでも信じ、「統合の原理」の有り様を高らかに問いに付することである。そして、この問いを問う学を、ここでは仮に「統合学」と名づけ、既存のいかなる専門分野にも帰属せしめず、いかなる諸学にも共有されるべき新たな創造的地平を開く使命を、この学際的範疇の知的試みに託したいと思う。こうした主張の背景には、諸宗教相互の間、東西文化の思想相互の間に作用する「共可能性」の仕組みからも、われわれの思考や知の本質が、それ自体、自己組織能でなければならぬとの確信に基づいている。さもなければ、今日、唱導される諸学問の共可能性の学際性、諸文化の共可能性の国際性どころか、いかなる個別の学問、個別の文化でさえ、それらの存立は根底から危ぶまれることになるであろう。

 わが「統合学術国際研究所」は、『国際フォーラム2000』とプリゴジンの胸臆を引継ぐことによって、かかる問題提起と研究課題とに取り組みつつ、国際的規模で吟味検討する場において共々に研鑚する機会を供することにしたいと念願するものである。

第1章 総 則

(名 称)
第1条  この研究所は、統合学術国際研究所と称する。
(事務局)
第2条  この研究所は、事務局を東京都新宿区新宿6-29-7-801に置く。

第2章 目的及び研究内容

(目 的)
第3条  前文にて触れておいたように、わが研究所の目的は、現代の諸学問を通底する思考や知の統合の可能性を論究するところにある。存在の真理において、本来、西も東もないし、宗教も科学も哲学も、殊更に特権をもつわけではない。こうした目的達成のためには、したがって、わが「統合学」に向けて共同研究チームを形成し、当然のこととして学際性、国際性に富んだ協調性を目指さなければならない。その協調の精神は、統合形成の思考の原点でもあって、研究目的、研究内容とも一致する。
(研究及び事業内容)
第4条  宗教・科学・哲学等の知的伝統を通じて備蓄された人類にとっての普遍的思惟の成果をつねに問い直し、世界の変動に対応する新しい思考の枠組みをたゆみなく目指す「統合学」に向けて、第二章第三条の(目的)を達成するために、以下の研究をおこなうこととする。

(1)国際交流並びに研究調査

(2)研究奨励並びに研究者の育成

(3)紀要等研究成果の刊行

(4)講演会・研究会の開催

第3章 役員、研究所長、評議員及び職員

(役 員)
第5条  この研究所には、次の役員を置く。

(一)特別顧問 若干名

(二)顧問 若干名

(三)理事 20名(うち理事長1名、研究所長1名、常務理事1名、監事2名とし、監事は理事が兼任する)

(四)評議員 5名

(五)理事長は、理事会において互選により決定する。

(六)常務理事は、理事長の指名により、理事会並びに評議会の承認を得る。

(七)研究所長は理事会において推薦された者の中から、理事長がこれを定める。人格見識共に当研究所所長にふさわしい人物を招請する。

(理事長及び常務理事)
第7条  研究所所長は、理事を兼任する。

(1)研究所所長は、この研究所の研究全般を統括し、研究の方針、研究の成果を創出するべく研究体制を確立し管理する。

(理事の職務)
第8条  理事は理事会を組織し、この研究所の業務を議決し、執行する。
(役員の任期)
第9条  役員の任期は2年とし、再任を妨げない。

(1)補欠により選任された役員の任期は、前任者の残任期間とする。

(2)役員の中で役員たるにふさわしくない行為等があった場合、理事会の決議により、これを解任することができる。

(評議員)
第10条 評議員は、学識経験者の中から、理事会の推薦により理事長が委嘱する。

(1)評議員には、第9条の規定を準用する。この場合、同条中の「役員」とあるのは、「評議員」と読み替えるものとする。

(評議会)
第11条  評議員は、評議会を組織し、理事長・所長の諮問に応じ、又、理事会に対し必要と認める事項について助言する。
(顧問及び参与)
第12条  理事長は、必要に応じて、理事会の決議を経て、顧問及び参与を若干名委嘱することができる。

(1)顧問及び参与は、理事長の相談に応じるほか、この研究所の事業及び研究の運営につき助言する。

(2)必要に応じて、最高顧問、特別顧問を理事会の議決を経て招請することができる。

(研究員)
第13条  研究員は、テーマごとにプロジェクトチームを結成し、研究所所長の推薦により理事長が委嘱する。
(財源及び会計)
第14条  この研究所の運営の為の財源は、寄付により賄われるものとし、理事会で管理運用される。

(1)会計の収支決算は、毎会計年度に理事長が作成し、広く関係各方面に報告しなくてはならない。この研究所の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年の3月末日に終わる。

第4章 議決

(理事会及び評議会)
第15条 理事会及び評議会は、毎年1回理事長が招集する。

重要案件の採択に当たっては、理事会及び評議会共に出席者及び委任状を含む総数の3分の1以上の賛同を得なくてはならない。

なお、この規則は、西暦2003年5月30日を以てその効力を発効する。